akam 凶悪な恋人1 2026.4.5

自分の二次創作中の赤安について学習させたAIに、プロットに対して執筆作業において下地のみを任せ、私が更に加筆修正等の細かな編集を行っています。無断転載等はおやめください。





平日の夜にしては、店は混んでいた。駅前の雑居ビルの二階にある古びた居酒屋は、油と煙草と焼き鳥の匂いが染みついている。低い天井に吊るされた裸電球が黄ばんだ光を落とし、隣席の笑い声とグラスの触れ合う音が絶え間なく重なっていた。
テーブルの上には空いた皿がいくつも積まれ、枝豆の殻や串が雑然と残っている。ビールジョッキはすでに三杯目が空き、四杯目のハイボールが半分ほど減っていた。

「降谷さん、そろそろ水にしませんか」

風見が静かに言う。向かい側に座る降谷は、ネクタイを緩め、ジャケットを椅子の背にかけ、頬をほんのり赤くしていた。目元は疲労で影が濃い。ここ数週間、休みらしい休みを取っていないことを風見は知っている。

「大丈夫だ」

そう言いながら、グラスを持つ手が少し危うい。
忙しすぎた。事件の後処理、内部調整、対外折衝。睡眠時間は削られ、食事は適当になり、身体は限界に近かった。その状態での酒は、よくない方向に作用していた。
降谷は不意にテーブルに突っ伏した。

「……もう、忘れたい」

くぐもった声だった。

「何をですか」

風見は淡々と問う。
しばらく沈黙が続いた後、降谷が低く言う。

「赤井のことなんか、忘れたい」

風見は小さく瞬きをした。予想していなかったわけではない。ただ、こんな形で出てくるとは思っていなかった。

「何かあったんですか」
「何もない」

すぐに返る。だが声は拗ねた子どものようだった。

「返信が遅い」
「は?」
「やたら遅いんだ、あいつ。こっちが送っても、平気で数日。ひどいときは数週間だぞ」

顔を上げないまま、言葉だけが流れる。

「こっちは、やきもきしているのに」

店内のざわめきの中、その一言だけが妙に生々しかった。
風見はグラスを置く。

「電話はしないんですか」
「……しない」
「なぜ」

降谷が顔を上げる。目が据わっている。

「電話なんかしたら、僕だけが気にかけているみたいだろう」

吐き捨てるように言う。

「悔しいんだ」

その一言に、風見は黙った。
降谷はグラスを掴み、残りを一気に煽る。

「なんで僕ばかり、待つ側なんだ」
「降谷さん、もうやめてください」
「まだ飲む」

空いたグラスを乱暴に置く。
風見は小さくため息をついた。自分はしばらく赤井と連絡を取っていない。だが、今この状態を放置するのも違う気がした。
ポケットからスマートフォンを取り出す。迷った末、連絡先を開き、そっと発信ボタンを押した。
どうせ出ないだろうと覚悟していたが。

『風見くん?』

すぐに繋がった。
低い、落ち着いた声。だが、わずかに警戒が混じっている。

『どうした。何かあったのか』

風見は店内の喧騒を背に、淡々と答える。

「いえ。緊急ではありません。ただ、降谷さんがあなたの件で言いたいことがあるようで」
『俺の件?』

明らかに声色が変わる。心配の色が濃くなる。
風見はスピーカーに切り替えた。
その瞬間、気づいていない降谷がまた呟く。

「……もう忘れたい……あんなやつ……」

一瞬、電話の向こうが沈黙した。

『……何だと?』

低い声がわずかに揺れる。

『風見くん、どういう状況だ』
「酔っています」
『随分と』
「あなたの返信が遅いそうです」
『……は?』

素で驚いた声だった。
降谷はまだ気づかない。

「数週間来ないとか、ありえないだろ……僕がどれだけ……」
『零くん?』

赤井が少し大きな声で呼ぶ。だが降谷は反応しない。

『風見くん、聞こえていないのか』
「はい。聞いていません」
『……』

電話の向こうで小さく舌打ちが混じる。

『俺は、忙しいだけだ』
「でしたら、さっさと返信すればいいのでは」

風見の声は冷静だった。
短い沈黙。

『……返す』

赤井が低く言う。

『むしろ今、話をさせてくれ』

風見はスピーカーを切り、スマートフォンを降谷に差し出す。

「電話です」
「……誰だ」
「赤井さんです」

降谷がゆっくり顔を上げる。数秒の沈黙の後、目を見開いた。

「なんで……」

だが手は素直に受け取る。

「もしもし」
『零くん』

その声だけで、降谷の表情が揺れた。

『返信が遅いと聞いた』
「遅い!」

急に声が大きくなる。

「なんでそんなに平気なんだ! こっちは……こっちは……」

言葉が絡まる。

「待つのは嫌いだ」
『知っている』
「だったら……」

電話の向こうで、赤井が明らかに焦っている。

『零くん、俺は』
「忙しいとか言うなよ! 僕だって忙しい!」

店内の客がちらりと見る。
風見は額を押さえる。

『零くん、今どこだ』
「日本だ!」
『そういう意味ではない』

会話が成立していない。
風見はそっとスマートフォンに手を伸ばす。

「そろそろ切りますね」
『待て』

赤井の声が鋭くなる。

『俺は今アメリカだ。すぐには行けない。風見くん、頼む。今日は彼を頼む』

切実な声音だった。風見は一瞬黙る。

「……自分は、降谷さんの言いなりにしかなりませんので」
『それでいい』

即答だった。

『今夜はそれでいい』

降谷はまだ何かぶつぶつと文句を言っている。

「……返信、早くしろ……」

赤井の低い声が、最後に穏やかに落ちた。

『返信はすぐに返す』

通話が切れた。
画面が暗くなり、居酒屋の喧騒だけが現実に戻ってくる。
降谷はまだぶつぶつと文句を言いながら、テーブルに突っ伏した。

「……忙しいとか、言い訳だろ……」

声は次第に小さくなり、そのまま動かなくなる。どうやら限界らしい。
風見はしばらくその肩を見つめ、それから深く息を吐いた。
赤井からの返信が、今すぐ来ることはないだろう。あの男はそういう人間だ。焦って取り繕うタイプではない――今夜の声色は明らかに穏やかではなかったが。

「……まったく」

呆れて呟く。
世界を相手に冷静でいられる二人が、互いのこととなるとこれだ。
風見は水のグラスをそっと降谷の手元に押しやり、肩を軽く叩いた。

「降谷さん、今日は自分が送ります」

返事はない。ただ、わずかに眉間が緩んでいる。
それを見て、風見は小さく肩をすくめた。

「本当に、手のかかる人たちだ」



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