akam Breakers1 2026.5.1
自分の二次創作中の赤安について学習させたAIに、プロットに対して執筆作業において下地のみを任せ、私が更に加筆修正等の細かな編集を行っています。無断転載等はおやめください。
庁舎の会議室の空気は、二人しかいないというのに重かった。
モニターには暗号化チャットのログ、海外口座への送金履歴、そして“ドナー”と記された名簿が並んでいる。
違法臓器移植の斡旋組織、表向きは医療コンサルタント会社。国内の難病患者に「海外での先進医療」と称し、裏では失踪者の臓器を流している。直近三か月で確認されただけでも八名が行方不明。証拠はなく、資金の流れも分断されている。
唯一の突破口は、次の大型契約に絡む仲介役の席だ。そこに入り込める人材は限られている。
「僕が入る」
降谷は資料を閉じた。机上に置かれた偽造身分の履歴書には、海外医療ファンドの監査担当という肩書が印刷されている。
「駄目です」
風見は即座に返した。
「相手は顧客の全身スキャンデータ、家族構成、過去の訴訟歴まで洗います。ましてや仲介に入るあなたは、それ以上に精査される。少しでも綻びがあれば拘束、最悪は事故死扱いです。実際、内部告発者が二人消えています」
「だからこその僕だ」
「あなたの身分が割れれば、日本の医療機関との裏取引が露見します。公安の責任者が裏社会と接触していたという構図を作られれば、組織ごと揺らぎます」
「揺らがせない」
降谷の声は低く、硬い。
「この契約は今週末だ。別の潜入員では信用を得るまでに時間が足りない。その間にドナー候補が消える」
「あなたが消えれば、もっと大きい損失です」
風見は一歩踏み出す。
「相手は医療データを人質に取ります。監禁場所は移動式の違法な手術施設。位置特定は困難。あなたが拘束された場合、救出はほぼ不可能です」
「可能にする」
「理屈ではありません」
平行線だった。室内の時計の秒針だけが響く。
風見は唇を引き結び、スマートフォンを取り出した。
「……失礼します」
発信すると、数秒後、低い声が出た。
『……何だ』
「赤井さん、スピーカーにします」
『構わない』
風見はスマートフォンをデスクに置く。
「違法臓器売買ネットワークの件です。今週末の契約に公安側の偽装仲介を入れる。潜入者は降谷さんです。資金は国外ネットワークに流れています。通常の医療犯罪の範疇ではありません』
電話の向こうは沈黙したままだ。
『相手は身辺調査を徹底します。拘束歴、金融履歴、過去の渡航歴まで。少しでも矛盾があれば拘束。内部告発者は行方不明。拘束後の生存率は低いと推定されます」
『零くんはやると言っているのか』
「はい」
『なら妥当だ』
風見は一瞬、息を呑む。
「……本気ですか。あなたなら止めると思った」
『止める理由はあるのか』
「相手は拘束後、即座に鎮静剤を投与します。身元確認が終わる前に意識を落とす。移動式施設は電波遮断仕様、GPSも死にます。拘束から三十分で商品として扱われる可能性がある。生存率の問題ではなく、回収不能のリスクです」
『危険度で言えば、他の誰が入っても同じだ。むしろ零くんが一番生き延びる確率が高い』
「生き延びる確率の話をしているのではありません」
風見は一歩も引かない。
「あなたは分かっているはずだ。これは失敗した場合、救出作戦すら組めない類の案件だと。捕まれば痕跡ごと消される」
『任務だろう』
淡々とした声音だった。
『代替案は出ているはずだが』
問いではない。事実確認の断定だ。
風見の肩がわずかに強張る。反対する以上、選択肢は並べてある。
「内部潜入員の三名を検討しました。医療経歴を偽装できる者が一名。金融監査経験を持つ者が一名。ですが、いずれも経歴の厚みが足りません。相手の精査に耐えきれない可能性が高い」
資料の端を指先で押さえながら続ける。
「段階的接触案もあります。下位ブローカーから信頼を積む。ただし三か月は必要です。その間に契約は流れる」
言いながら、自分でも分かっている。どれも決定打ではない。
『他は?』
声は変わらない。逃げ道を潰すように静かだ。
一瞬、迷う。だが伏せる性質ではない。
「……私が入る案もあります」
室内の空気がわずかに動く。
風見は続けた。
「医療系ファンドとの接触履歴は作れます。身元の厚みは足りませんが、強引に押し切ることは可能かと」
自分で言っていて無理があると分かる。信用獲得の速度、交渉力、即応力。すべてにおいて足りない。
数秒の沈黙。
そして、ほとんど同時に降谷が小さく息を吐き、スピーカーの向こうで赤井が低く笑った。
「……何がおかしい」
風見の眉間に皺が寄る。降谷は肩をすくめる。
「風見、おまえは優秀だ。だが今回は適材ではない」
言葉は淡々としているが、否定に迷いはない。スピーカー越しに赤井が続く。
『君が入れば成功率は落ちるだろう』
冷酷なまでに率直だった。
『零くんが入るのが最短だよ』
風見の喉がかすかに鳴る。分かっている。分かっているからこそ腹が立つ。
「……責任者を行かせる合理性はどこにあるんですか」
『合理性は成功確率だ』
間髪入れない。
『情で配置を変える方が危険だ』
その言葉に、風見は何も返せなくなる。悔しさと、自分の案の薄さへの自覚と、それでも止めたい衝動がせめぎ合う。
降谷はその様子を横目で見て、わずかに口角を上げた。勝った、という顔だ。
『相手は医療倫理を盾にしている。外からは崩せない。中に入るしかない』
そして赤井の声は冷たいほど平坦だった。まるで既に結論が出ている事実を淡々と読み上げているだけのように。
「あなたはいつも、降谷さんの無茶を止める側では?」
風見の問いは静かだが、硬い。これまで幾度か見てきた構図が脳裏をよぎる。危険に踏み込みかける降谷を、外側から冷静に引き戻す男。その役割を、今ここで期待している自分がいる。
『無茶かどうかは計算で決まる』
一拍あった。
その沈黙は短いはずなのに長く感じられる。降谷は腕を組んだまま動かない。
風見は沈黙したまま、指先へ力を込めた。
『零くん』
「なんでしょう」
降谷の声は落ち着いているが、スマートフォンを見る目は鋭い。試されているわけではないと分かっていても、確認の響きがある。
『逃げ道は確保しているか?』
短い問いだ。だが、その裏にあるのは具体的な生存線の確認。潜入経路、撤退経路、通信のバックアップ、身元照合対策。その全てを織り込んだ上での質問だ。
「無論、二重に」
降谷は即答する。迷いはない。準備は終わっているという自負が滲んでいる。
『なら行け』
あまりに簡潔で、あまりに重い承認だった。
風見は言葉を失う。止めるどころか背中を押している。その判断の速さに、内心の想定が崩れる。
「あなたは……」
続きを探すが、適切な言葉が見つからない。責めたいのか、確認したいのか、自分でも定まらない。
『感情で止める気はないよ、風見くん』
赤井の語調は、普段と何ら変化なかった。
『帰って来い。それだけだ』
その一言に、命令でもなく、懇願でもなく、前提が含まれている。戻ることを当然とする声音だ。
「当たり前だ」
降谷は即答する。迷いはない。自分が帰還する未来を疑っていない態度だ。
風見は拳を握る。爪が掌に食い込む。理屈では理解している。だが理解と納得は別だ。
「繰り返しますが拘束された場合、通信は遮断されます。救出の保証はありません」
言葉は最後の抵抗に近い。最悪を想定しておかなければならないのは自分の役目だ。
『保証がある任務などない』
冷徹な現実だ。だが投げやりではない。事実の確認であるだけだった。
『風見くん、君はフォローに回れ。資金の流れと移動式施設の追跡を同時進行だ。零くんが消えた瞬間、座標を割り出せ』
命令ではなく、役割分担の提示だ。信頼の上に置かれた配置。
風見は歯を食いしばる。止められないなら、もはや成功確率を一%でも上げるしかない。
「……承知しました」
通話が切れる。
スピーカーから電子音が消え、室内に残るのは重たい沈黙だけだ。
降谷は微笑しながら資料を手に取る。その表情は平然とした決意に満ちている。
風見は苦々しくその横顔を見つめる。
止められなかった悔しさと、それでも降谷と赤井が最適解だと理解している理性が、胸の奥でせめぎ合っていた。
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