akam 厄介な恋人2 2026.4.23
自分の二次創作中の赤安について学習させたAIに、プロットに対して執筆作業において下地のみを任せ、私が更に加筆修正等の細かな編集を行っています。無断転載等はおやめください。
三人で食事を終え、食後の皿を下げながら、降谷はふと戸棚を開けた。整然と並んだ書類の横にあるはずの箱が見当たらない。奥を探り、棚板の端まで視線を走らせるが、眉が寄った。
「……ティッシュがない」
他の引き出しを確かめる。最後のひとつをいつ使い切ったのか、思い出そうとする仕草だけが几帳面だ。予備が切れていると分かると、小さく舌打ちを落とす。
「買ってくる」
「今からか?」
赤井の声は穏やかだが、どこか様子を窺う響きがある。
「あなたが帰ってくるなら、帰りがけに買ってきてほしかったんですよ」
淡々とした嫌味だ。
「連絡がありませんでしたから」
「なら俺が行こう」
赤井が立ち上がりかけると、動きにかぶせるように降谷は首を振った。
「僕が行く。あなたは風見と待っていてください」
冷蔵庫を開け、皿を取り出す。載っているのは白くなめらかなチーズケーキ。表面は艶やかで、事前に準備されていた気配がある。包丁を入れると、刃は抵抗なく沈み、きめ細かな断面が現れた。
「手作りだ。風見も食べていけ。緑茶が合う」
手際よく急須に茶葉を入れ、湯を注ぎ、蒸らす。湯気が立ち、ほのかな香りが空気に混ざった。動作に迷いはない。
「すぐ戻る」
キャップを被り、玄関へ向かう。降谷の足音が階段を下りていく音がして、やがて静寂が戻った。
部屋に残ったのは、ダイニングテーブルを挟んだ赤井と風見だけ。
風見はフォークを手に取り、ケーキを切り分ける。柔らかな感触が手に伝わる。口に運ぶと、甘さは控えめで、わずかな酸味が後味を引き締める。おいしい。率直にそう思う。だが、目の前にいる相手のせいで舌の感覚に集中しきれない。
赤井は無口だ。降谷の前では、時折意地悪く、時折静かに言葉を落とすが、基本的には自分から喋らない。湯呑から立ちのぼる湯気の向こうで、今は淡々とフォークを動かしている。その姿勢には緊張も弛緩もない。
数拍の沈黙ののち、先に口を開いたのは赤井だった。
「俺が帰宅したとき、零くんはなぜあんなに怒っていたんだ」
風見はフォークを止める。やはり問われた、と内心で思う。
「三日前の朝、起きたらあなたがいなかったと。伝言もなく、チャットも既読がつかなかった。来日中は比較的やりとりがあったので、その落差が堪えたのでは」
説明口調だが、事実を並べただけだ。
赤井は小さくため息をつく。
「俺は筆不精だ。ただ、この部屋に転がり込んでいるときは、なるべく返信するようにしていた」
「なら、返信して差し上げればよいのではないですか」
「今回は少し慌ただしかった」
言葉は簡潔だが、視線がわずかに泳ぐ。その一瞬を風見は見逃さない。
沈黙が落ちる。時計の秒針の音が、やけに明瞭に聞こえる。
「職場では、彼はどうだ」
赤井の問いは感情が読めない。ならばこちらも淡泊に返すだけだ。
「今回の件に限って言えば、うわの空のときがありました。先ほど話を聞いて納得しましたが」
赤井は目をしばたたかせる。
「そうか……。彼は、仕事上では取り繕うのがうまいと思っていたが」
「あなたを除く、ですよ」
風見は湯呑を持ち上げる。
「あなたに関することは、あの方は何でも不安なんです」
「そうか?」
「恋をすると弱くなると嘆いていました」
赤井は目を丸くし、フォークを持たない右手で目を覆い、天井を仰ぐ。
「Oh……」
「……何ですか」
「いや。恋なんて言葉を、彼の口から聞けるとは思わなかった」
「正確には“人を好きになるというのは面倒だ”と。恋とは言っていません」
「でもそれは恋だろう」
「……まあ」
風見は小さく肩をすくめる。
「とにかく、あまり振り回さないでいただきたい。あの方は、あなたに関することに限っては非常にデリケートなんです」
赤井は静かに笑う。
「風見くんがいると安心だな」
「はい?」
思わず語気が強くなる。安心とは何のことか。自分は保護者でも監督官でもない。
そのとき、玄関の鍵が回る音がし、降谷が戻った。五個入りのティッシュをぶら下げ、軽く息を弾ませている。
「ケーキどうだった」
何事もなかったかのような声だ。
「おいしかったです」
風見は緑茶を口に含む。温度が舌を落ち着かせてくれた。
「ごちそうさまでした。そろそろ帰りますね」
「泊まっていけばいい」
降谷が言う。冗談なのか本気なのか判別がつかない。視線はまっすぐだ。
「それはちょっとな」
と赤井が困惑気味に言う。
監察の照会よりも、こちらの方がよほど神経を使うと風見は密かに嘆息した。
鞄を手に、玄関へ向かいながら思う。自分は部下なのか、調整役なのか、それとも単なる緩衝材なのか。
背後で、ティッシュの箱を棚に押し込む音と、降谷の「ちゃんと連絡しろよ」という呆れたような声が重なる。赤井の小さな返答は聞き取れない。
靴を履き、扉を開ける。夜気が肌を打つ。
外気は冷たい。だが、外の寒さの方が、あの部屋の空気よりよほど単純だった。