「マリアさん、あのう、何してるんですか」
「ちょっと待ってリーベルまだ動かないで!」
強い口調で命令されてしまえば、愛する女性に対し口ごたえなどできるはずもない。ただ口を噤んで従うだけだ。だがしかしこれは拷問ではないか? 心の中では密かに反抗していた。
先ほどからマリアは、リーベルの頭に泡風呂の泡をのせ続けてどこまで積み重ねられるかという、意味のよく分からない遊びをしているのだが、彼女が湯船で立て膝をしているせいで、リーベルの目の前には、泡がしたたる二つの乳房がぷるぷると揺れているのである。両手に泡を持ちながらリーベルの頭上を見つめているマリアは真剣そのものであり、もうずいぶん両手ですくってはのせる行為を繰り返しているので、リーベルの髪と肩と背中は泡だらけだった。
頭の上に重ねても、その重さで泡は落ちていってしまう。動けないし、こそばゆいし、手の届くところにおっぱいはあるし、きらきらした目をしているマリアは本当にかわいいし、いっそ両手を伸ばして二つをわしづかみにしてしまいたいのだが、衝動に駆られても耐え続けるのは、もはやリーベルの性格だった。
「やっぱり三十センチくらいが限界なのかしら」
「なんの実験なんですか、これは」
「なるべく細かい泡を使うようにはしているんだけど」
ずっと腕を上げているので疲れたらしく、マリアは息をつき、両手を沈めて肩まで泡風呂に浸かった。よほど熱中していたのか、頬が上気している。そんな姿もかわいらしくて抱きしめたくなったが、まだ命令は解かれていないのでじっとしている。
マリアは微動だにしないリーベルを見て、ふふっと笑った。
「頭から泡だらけになってしまったわね。ごめんなさい」
「いえ……もう、動いてもいいですか」
「ええ」
けっこうな時間拘束されていたので、疲れを取るために風呂に入っているというのに怠くなった身体をぐーっと伸ばす。頭に残っていた泡がぬるぬると背中を滑っていき、ああ……と変な溜息が漏れた。
「普段はシャワーしかしないから、けっこう体力使いますね、湯船って」
「そうみたいね。クラウストロ人は湯船に浸からないと知って、幼いながらクリフとミラージュには抵抗したわ」
ここはディプロにあるマリアの自室である。クォークのリーダーの部屋なので、一般船員に比べればかなり広めに作られている。ずいぶん昔、クリフがリーダーだったときに謎の改築をしていた記憶があるのだが、それこそがマリア用のバスタブを作るための工事だったらしい。
他の船員にあてがわれている部屋にはシャワー室しかないので、バスタブで湯に浸かるという習慣のないリーベルは、温かくて浅いプールに素っ裸で入っている感覚だった。マリアに合わせた小ぶりな設計のため、リーベルは半身浴の状態なのだが、長い間入っているせいか身体が温まってきたらしく、額からは汗が噴き出ている。
「地球人は、みんなこうやって風呂に入るんですか」
「いえ、たぶんそういう文化を持つ人間だけなんだと思うけれど」
今となってはもう分からないわね、とマリアは肩をすくめた。
「私はシャワーだけだと気持ち悪くて。肩までゆっくり温まるのが好き。こんなふうに泡風呂にするのは久々だけどね」
リーベルがマリアの部屋で一緒に入浴しているのは、単純に二人が恋人同士で、彼女に「一緒にお風呂に入らない?」と誘われたからである。もともと行為のあとシャワーを浴びる程度はしていたのだが、それとは関係ないとしてもこの魅力的な申し出を断れるはずもなく、リーベルは喜び勇んでマリアについていった。
バスタブの淵に頬杖をついて、マリアを見る。泡を両手にのせて、ふーふーと吹いている恋人は、リーダーでいるときの姿よりずっと幼く無邪気で、文字通り裸の付き合いができるようになったことは、彼氏彼女と呼ばれる関係になってからしばらく経つが、リーベルにはいまだ夢のように感じられるのだった。
息で散らされた泡が、ふわふわと肌にくっつく。マリアは手を伸ばし、男の首元を指先で撫でた。
「三本線が隠れてしまったわ」
「うん? ああ……なんでクラウストロ人って首に線があるんでしょうね」
マリアの模様のない首について初めて意識したとき、ふとそう疑問に感じたのを思い出す。
「特に、何か感じるとかではないんですけど」
「そうなの。私、この首のライン、好きよ」
泡を使って撫でてくるのがくすぐったくて、たまらず首をひねった。マリアはいたずらっ子のように目を輝かせて首の後ろのラインをたどっている。
「ちょ、マ、マリアさん」
「すてきな模様だと思うわ」
にこっと笑い、マリアは手を退けた。その笑顔は本当に愛らしい。ああ、抱きしめたい――身体の奥底から湧いてくる強い衝動を感じつつも、今はただの入浴時間だと自分に強く言い聞かせて、耐えた。
リーベルの葛藤などつゆ知らず、マリアは細い脚をゆったりと泡の中に伸ばした。
「私、自分の住む家を持つなら、広いお風呂を作りたいの。少し泳げるぐらいがいいわ。窓を大きくして、静かな場所に作るのよ。窓から綺麗な景色を見て、海の潮騒とか木々のざわめきとか、そういうのを聞きながら、ゆっくりと入れるような」
「家……ですか」
急な話題に想像がつかず、リーベルは曖昧に頷いた。
「いいですね」
「白い外壁の家。大きなベッドも欲しい。窓枠は濃く青いのがいいわ。エリクールにいたとき、たまたま本で建築について調べたの。素敵な家がたくさん載っていたわ。広くなくていいけれど、二階建てで、庭付きで、屋根も青がいい」
「マリアさん、青が好きですもんね」
マリアの長髪もまた美しい青だ。濡れた身体に張り付いて、今はいつもより濃い青色に見える。リーベルも彼女の青色で、青が好きになったかもしれなかった。今まで意識して選ぶことなどなかったのだが、身の回りの小物に青色のものが増えたからだ。
「いいと思います、白と青の家」
「そうでしょう。リーベルも一緒に住む?」
えっ……とリーベルは声を上げた。マリアは今までの調子と同じように平然とした様子で告げたが、あまりに唐突な話だった。
どきどきと胸が鳴る。急に身体が熱くなり、ぶわっと鳥肌が立った。
「え……と」
マリアは少し首を傾け、恋人の返答を待ちながら、まっすぐこちらを見つめている。その表情はいつもと何ら変わりないように思えたが、これはかなり重大な話だ。というのも、リーベルもいずれは決めなければならないことだと分かっていたからだった。
マリアは以前、ディプロから降りてどこか平穏な場所で隠居したいと言ったことがある。戦いは済んだが、自分の力が消失したわけではない、何かあればまた狙われるときがくるかもしれないから、クォークの皆に迷惑をかけたくないので、いずれはリーダーを退任する、と。それは、今すぐにという話ではなかったはずだが、いまだ彼女がディプロに乗っているのは、行き先が決まらないというより真剣に移住先を探していないという惰性によるものだった。リーベルは、マリアがまだ実際の行動に移さないことに、少し安心していた。自分はあくまでクォークに所属している人間なので、船に乗り続けるか母星に帰るかの二択しかないのだが、マリアの恋人となったときから、マリアと共に生きるという選択肢が増えている。その第三の選択肢を選ぶということは、すなわち自分もクォークから脱退することを意味していた。
それが今なのか? リーベルは緊張した。考えようにも頭の中が混乱して、言葉が出てこなかった。答えは決まっているのだが、これまで具体的に考えてこなかったせいで、安易に返答してよいのか疑問に思うところもある。曖昧なことを言えば言うほど、単純な物言いを好むマリアをどんどん不安がらせてしまうだろう。彼女は恋愛面ではかなり臆病な部類だ。
どうしよう……。リーベルは額に冷や汗をかくのを感じながら(幸い入浴中なので、彼女には分かりようがないが)、とにかくマリアに心配の種を撒かない言葉を必死に考えた。答えは決まっている、決まっているのだが、物事には順序というものがあり、今は一日一日が幸せいっぱいで明日のことを考えるのが精一杯だし、将来のことを決められるほどまだ熟考していないうえ、彼女の前にはクリフとミラージュという強力な保護者も立ちふさがっていて……
「リーベル?」
「あっ、は、はい、すみません。ええと、オレは、その……」
ああだめだ、まごまごしてしまう。こういうときに必要な冷静さが、自分には欠けているのだ。このままでは愛する人を不安にさせてしまう――焦りと気まずさで視線を合わせられなくなり、一方で「一緒に住む」という言葉に興奮し始めている己もいて、いろいろな意味でまずいことになってきたと慌てていると、マリアが言った。
「私は、リーベルとずっと一緒にいたいの。ずっとよ」
リーベルは、マリアを見た。彼女は、真面目な――というよりも、やはり先ほどと変わらない、とりわけ感情のぶれがあるようにも見えない様子で、泡の中に埋もれながら、リーベルに片手を差し伸べた。
「そうなるものだと思っていたのだけれど」
リーベルは身体に震えを感じながら、彼女の手を取り、軽い力で包み込んだ。その華奢さを感じたとき、ほとんど反射的というふうに、彼女に近寄って、細い身体を両腕でそっと抱いた。泡越しに、彼女の体温を感じる。マリアが、愛する女性が、この宇宙の中で、この瞬間、この場所で、自分と共に生きているという実感に泣きたくなった。
「オレで……いいんですか」
「え?」
「そんな大事な役割を担わせるのがオレで、本当にいいんですか」
はあ、と思わず溜息が出る。それは呆れではなく、感動の溜息だった。
「つまり、それは、あなたは死ぬまでオレと一緒にいるということですよ。少なくとも、オレにとってはそうです。いつ死ぬかなんて分からないけど、多分、死ぬ瞬間まで、いえ、死んで骨になっても、永遠にそばにいるということですよ」
「そうよ」
さも当然、まるで常識だと言わんばかりの口調に、リーベルは脱力した。マリアの頭に額をのせて、うなる。
「マリアさん……」
「だって、リーベルは私が好きで、私はリーベルが好きなのだから、私たちは愛し合っているんでしょう。だからこそ、愛する人といられるなら、ずっと、永遠に一緒がいいと思うのは当たり前じゃない」
そういうことかとリーベルは理解した。彼女の思考回路は、周囲から猪突猛進だと言われがちな男でさえ驚くほど、簡潔で純真無垢なときがある。彼女の中にある分かりやすい公式のようなものなのだろう。ときにリーベルもはっと気づかされ、反省することがしばしばあった。リーベルが考えすぎだとか、マリアが考えなしだとか、そういうことではない。おそらく、マリアは、二人の間にある事情を様々考えたうえで、「愛し合うなら一緒にいる」という答えを導き出したのだ。
リーベルは、そのごく単純な言葉を頭で反芻して、涙が溢れそうになった。同じ想いでいてくれているのだ、愛してくれているのだ、自分のことを。心から敬愛する、聡明で美しい人が。
「そう、ですね……」
涙が溢れたとしても、湯と泡の中だから、きっと分かりはしないだろう。
「愛し合っているんですもんね、オレたち」
「……うん」
珍しい相槌を打ちながら、マリアはおずおずといった様子で男の背中に腕を回した。
「そうよね?」
やや疑っている声だ。リーベルは苦笑して、マリアの濡れた髪を優しく撫でた。
「そうです。もちろんです。オレ、何度も言っているじゃないですか、あなたのことが好きだって、好きで好きでたまらなくて、頭がおかしくなりそうだって。いつからだったか分からないくらい、あなたに恋をして夢中なんですよ。答えなんて、決まってるじゃないですか。ずっと一緒にいますよ、たとえ骨になっても、宇宙の塵になっても、無になったとしても、ずっとあなたのそばに」
傍から見れば、リーベルのしていることも言っていることも、くさくて、幼稚に感じられるのかもしれないが、マリアという女性に必要なのは、まさしくこの明白さだった。もともと語彙の少ない自分だ、ときに物言いで相手を傷つけて後悔したこともあったが、かえってそんな自分だからこそ彼女の気に入ることができたのだと思うと、純粋に嬉しかった。
前までは、マリアは気難しい人間なのだと思っていた。昔から、人づきあいが得意というわけではない彼女は、クリフとミラージュのそばにいることが大半だったし、話すとしても女性船員を相手にすることが多く、男と会話している場面など仕事以外で見たことがなかった。プライベートなことも、本人の口から聞いたことはなく、船内でゴシップとなっていることを小耳にはさむ程度だった。
彼女を好きになったのは、いつのことだったかよく覚えていないが、おそらくそのゴシップが元だった。
「マリアは、人前では絶対泣かないけれど、部屋にこもって一人で泣いているらしい」
このフレーズを聞いたとき、リーベルは完全に恋に落ちた。もともと彼女は親から宇宙に放されて孤独になってしまった人間であり、いまや家族同然といえども、クラウストロ人ばかりのクォークで常に気を張っている女性が必死に隠そうとしている弱さがあると知り、ただただ愛おしいと感じた。むろん彼女のことを完全無欠であるなどとは思っていなかったが、全力で支えてあげたい、守ってあげたい、そばにいたい、愛したい、願いが叶うのなら愛し合いたいと強く感じたのだった。欲求が波のように押し寄せて、もうそのときから身も心もマリアを追うことしかできなくなっていた。
溢れんばかりの愛情に耐えられなくなり、リーベルはマリアの濡れた頬に静かな口づけを落とした。
「マリアさん、一緒にいましょう。覚悟はできていますから。いえ、覚悟とかそういうこと以前に、それがオレにとって当然なんですから」
もちろん、クォークのことも含め考えなくてはならないことはたくさんある。だが、いつだって土台にあるのは、常に二人が共にあるという誓いだった。誓い合えたのだ、愛する人と、抱く願いが一緒だったのだ、この果てしない宇宙の中で。それはなんと貴いことなのだろう。
「愛しています、マリアさん」
「私もよ。だから、結婚したらもちろん、あなたとの子どもが欲しいわ」
――――
ん?
「男の子でも女の子でもいいけれど、二人は欲しいの。これってつまり、地球人とクラウストロ人の混血になるのよね?」
んん?
「あ……でも首のラインってどうなるのかしら。あなたに似れば出るのかしら? それっておなかの中にいるときにわかるのかしら。体質がクラウストロ人に似るということよね。ということは、身体能力抜群の子になるわね。いずれにしても、住むためのよい環境を探さないとね。子ども部屋も用意しなくちゃ」
んんん?
「リーベル似の子が欲しいわ。髪の色も瞳の色も一緒がいいの」
「ちょっと待って」
思わず敬語が消えた。
「ちょっと待って。え?
けっ……子ども?」
「? ええ」
きょとんとしたマリアの声が聞こえる。
リーベルは頭の中が消しゴムで消されていくかのように真っ白になっていくのを感じた。
「……」
きっと何か、これは、きちんと、向き合って考えなければならない事案なのだが、一度に頭に情報が入りすぎて、期待と不安と夢と願望と、いやこれはもっと現実的に捉えなければいけないことだし、そもそも今はまだ恋人同士であって正直そこまで思いを馳せるのはおこがましいという気持ちもあって想像するのを封印していたというかもちろんマリアと結婚したいし彼女との子どもは欲しいがまず住む場所が必要であるし万一ディプロで妊娠してしまったとしてもきっと皆歓迎してくれるだろうがクリフとミラージュに半殺しにされて宇宙に放り投げられるかもしれないから避妊はきちんとしなければならないし
「――――
マリアさん!」
リーベルはマリアの両肩を掴んで離れ、ざばりと湯の中から立ち上がった。彼女の前に下半身が露出されたが、かまわなかった。湯気がどうにか隠してくれるだろう。
「ああ、もう! もう、なんか!
いやだ!!」
頭の中が沸騰し始めた。両の拳がわなわなと震える。
「マリアさん! あー! あなたって人は! もう!」
「なっ、何よ」
いつもハキハキとしているリーベルではあるが、このように声を荒げることはなかったので、マリアもかなり驚いたらしい。身をすくめてこちらを見上げてくる。しかし、リーベルはかまわず続けた。
「オレの気も知らないで! オレが今どれだけ真剣にあなたのことを考えて悩んで自分を抑えつけて必死に必死に耐えているか、あなたは知らないんだ! どれだけオレがあなたのことが好きか、心の底から恋い焦がれているか!」
「ちょっとリーベル、声が」
「ああ、もー、やだ、やだ、マリアさんかわいすぎてやだ、あなたがそんなだからオレはもう毎日毎日毎日心配で心配でたまらないんです、誰かにさらわれてしまうんじゃないかって、そんなことになろうものならそいつを文字通り銃で蜂の巣にしちまいますよ、さらうなんて絶対そんなことさせませんけど、万一そんなことになろうものなら発狂しますよ、いやもうオレはあなたに恋しすぎて発狂している!」
「声が大き」
「大好きですよマリアさん、本当に、もう言葉で言い表せないくらいあなたのことが好きです、一体どこにあるんですかそんな言葉、どうしたらいいんですかこの気持ち! 白い家? 住む? 一緒に? ずっと? 結婚? 更に、オレとの子ども? いや分かってましたよ、もちろん分かってるんですよオレたちが心底好き合っていることは、その点についてマリアさんは何ら心配することなんてないんですが、それは本当分かってほしいんですが、あなたの子どもなんて絶対かわいいに決まってるじゃないですか! オレに似なくていいんですよ! あのね、もう風呂に入る前から身体はうずうずして、目の前にかわいいおっぱいはあるし、濡れたマリアさんはきれいでセクシーで、男にとってこれがどれだけ拷問であるかあなたは分かってない!」
「廊下まで聞こえるわよ!!」
たまらずといった様子で立ち上がったマリアの、湯気に隠れていた真っ赤に上気している顔が間近に来て、リーベルの中でぷつんと何かが切れた。湧いた感情がすうっと引き、真顔になる。
「マリアさん」
「勘弁して!」
「あなたを抱きます。さっさと出ましょう」
「ん? ……は?」
「ベッドに行きましょう。もちろん避妊はしますよ。いずれしないときが来ますけどね」
「ちょ、何」
「ここでしますか? だめです、それはエロすぎますから後に大事にとっておかないと」
「きゃっ、ちょ、くすぐったい」
「ほらシャワー浴びて! 出る!」
「キャー! いや! あんっ、脇腹を触らないでっ!」
「リーダーの部屋の前に人だかりができてたぞ、お前」
翌日、普段よく話している同僚からそう告げられて、リーベルは純粋に落ち込んだ。あちゃあ……と頭を抱える。
「さすがに風呂から上がった後っぽいときは、ミラージュさんが散らしに来たけどさ」
「あああ……オレほんと、だめだよな」
あの後ざっとシャワーを浴び、さんざんマリアの部屋のベッドで交わった。最後にはマリアが力尽きてぐったりするくらいなので、相当の時間していたのだろう。あまりに夢中すぎて、力の加減に集中するのが精いっぱいだったから、マリアに妙な事をしていないか今更心配になってきた。
「マリアさん、大丈夫かなあ」
「いや、まあ、おれたちからすれば幸せそうで何よりって感じだけど」
「次会ったとき口きいてもらえなかったらどうしよう」
「結婚式には呼んでな」
あー! とリーベルは昨日のマリアに負けないくらい、耳まで真っ赤になった顔を両手で覆った。
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