「おいリーベル」
「え、あ、はい、クリフさん何ですぐぁっ!
 ゲ、ゲホッ、ゲホッ……ク、クリフさ……な、なんで服引っ張るんすか!?」
「リーベル」
「ゲホッ……は、はい?」
「ここ二、三日マリアの様子がおかしい。その理由を具体的かつ簡潔に報告せよ」
「…………」
「言わないと……………………潰す」
「どこを!?」
「オラ、早く、さっさと言えよ」
「……」
「ちなみにそこでスティングもランカーもミラージュも他のクルーも聞いているが、唯一マリアは入浴中でいないから安心していい」
「ちょ、なんすかその状況……げっ、みんなも何聞いてんだよ! ほら、散った散った!!」
「まあ待て、とにかくだ、マリアの様子が変なんだよ。妙に頬は赤いわ目がきらめいているわ機嫌はいいわ、ありゃただ事じゃねぇ」
「…………いいじゃないですか、機嫌がいいなら」
「バァーカ、俺は、誰が俺の娘同然のマリアに手ェつけたか知りてぇんだよ。お前だろ、リーベル? え?」
「……」
「おうおう、ここに来て黙秘かぁ? 二つとも潰すかオイ?」
「………………オレです」
「お前の銃で銃殺刑にしてやるから後で俺の部屋に来るといい」
「なんにせよ死ぬんですかオレ!?」
「平気だ、タマが無くなったところで呼吸はできるし死ぬわけじゃねぇし、銃殺刑も急所を外しつつじわじわ執行する予定だから」
「結局どっちも!? ちょっと待ってくださいよ、だってマリアさんは機嫌がいいんでしょう!?」
「気味悪いほどにな」
「ならいいじゃないですか、別に。機嫌が悪いよりは全然マシじゃないすか!」
「でもな、俺が、やなんだよ」
「それはクリフさん本位でしょ!? そ、それに、今オレが死んだらマリアさんが悲しみますよ!」
「ほぉぉぉぉーう……言うねえ」
「じ……事実なんだから仕方ないじゃないすか」
「で? 実際どこまで手を出したんだ、え?」
「…………」
「正直に言わねぇと二度とマリアを見られないように両目えぐってやるからな」
「グ、グロいですよ、それは……。言いますよ、言えばいいんでしょ」
「ああ」
「…………………………キ……キスまで、です」
「よし! お前の脳天かち割ろう!!」
「ちょちょちょちょ、ま、待って下さい! なんかさっきからむちゃくちゃですよ!!?」
「理由? そんなものはマリアに触れた時点でとっくに発生している。さて……エリアル・レイ」
「わーっ!! やばいですってそれはマジで!! なんでオレがこんな責められなきゃいけないんすか!!? だってマリアさん幸せそうなんでしょ!!?」
「……」
「幸せそうならいいじゃないですか、オ、オレの意志で彼女が今そうなってるわけじゃないんですから! 同意のもとですよ、同意の!!」
「……」
「…………そ、それに……
 オレの、願いが、やっと叶ったんだし……」
「かーっ! それがむかつくんだよ、リーベルのくせに生意気だなオイ!」
「い、いや、そりゃ、悪いなあって思ってますよ、だってクリフさん、マリアさんのお父さんのような人ですからね? で、でも、マリアさんの幸せを決めるのはあなたじゃないでしょ?」
「……」
「オレでもないですよ、マリアさん自身が幸せだって思ってるんですよ! 彼女自身から自然と発生したものなんです! オレが無理矢理そうさせたわけじゃないんです」
「でもきっかけはお前だろ?」
「ぐ……そ、それは、まあ、そうですが……」
「ああ、マリア……どうしてリーベルなんだ……」
「ええっ……オレじゃ駄目ですかお義父さん」
「おとうさんって呼ぶな!! ……いや、まさか、行き着く場所がリーベルだとは思ってなかったからな……」
「……」
「でもまあこれから気持ちが変わる可能性はあるしな、うん」
「なんで両思いになった途端にそういうこと言うんですか」
「はあ……そうか、お前か……はあ……はあああ」(´△`)≡3
「そんな盛大なため息つかれるほど駄目なんすかね、オレ……」
「いや、別に……お前を責めちゃいねぇよ、本当はな。俺はマリアが幸せならそれでいいんだ……いいんだが……」
「……オレだって、マリアさんが幸せならそれでいいんですよ。そう思ってちょっと前まで諦めていたところですし」
「うぐー」
「でもマリアさんが……オ、オ、オレのことを」
「待て、言うな。余計へこむ」
「……」
「そうかあ、マリアがなあ……昔から全くそっち方面に興味を持ってなくて不安になったりもしたんだが、やっぱりあいつも女だったってことか……
 くそっ、腹立たしい! マリアに寄りつく男なんぞ全てくたばればいいのにっ」
「もう何言われても傷つきませんよオレは……」
「あー、本当にへこむわ……後でランカーとやけ酒決定だな。
 チッ、お前、マリアのことを本気で好きなら死ぬ気で大事にしろよ」
「……しますよ」
「月並みだが、マリアを悲しませるようなことをしたら俺が承知しない。悲しませたら四肢をバラバラにして通りすがりの彗星に投げるぞ」
「なんでいちいち方法が残酷なんですか……分かってますよ、絶対に彼女を悲しませたりしません」
「マリアを泣かせるな、極力だ」
「分かってます」
「あいつは隠し事をしたがるタチだからな、お前、すぐに気付けるように対処しとけよ」
「はい」
「お前たちが今後どうなっていくか俺は知らんが、いいか、絶対に幸せにしろ、絶対にだ」
「します」
「もし一つでも破ったらお前の両足をもぎ取って花瓶に挿してやるからな」
「はいはい……っていうか、クリフさん、本当にマリアさんのお父さんみたいですね」
「悪いか。俺はあいつの保護者なんだよ、永遠の」
「永遠……」
「それから、これだけは忠告しておく。これだけは時が来るまで守れ、絶対の絶対だ」
「は、はい?」
「いいか…………避妊だけはきちんとしろよ!!」
「わっ…………分かってますよっ!!」





「ねえリーベル、なんだかお風呂に入っている間、廊下がすごく騒がしかったみたいだけど、どうしたの?」
「あ、いえ……ちょっと、クリフさんと話していて……」
「なんか“ひにん”がどうのって」
「ちょ、なんでそこだけ聞き取るんですか!? ……い、いや、その、それは、えっと……」
「何か否認したの?」
「えっっっ!!? い、いや、その、え、ていうか、え? あ、あの……ひ、避妊については、ま、まだ当分先では……?」
「?」