「ねえディアスー、私の下着がないのですわー」
「ここ最近お前の口から下着という単語しか聞いていない気がするんだが」
「おっかしいですわねえ、あの黒い下着、洗濯して仕舞ってあった気がするんですけど……」
「衣装袋の中に無いのか? というかお前、その衣服の量はどうにかならんのか。移動するとき邪魔で仕方ないんだが」
「袋の中には無いんですの。ランジェリーケースにも無くて。もしかしてまだ洗濯室に置きっぱなしとか」
「いや、さっき取りに行ったときには無かったぞ。その服の何点かは古着屋に売れば少しは足しになると思うんだが」
「じゃあ盗まれてしまったのかしら? あんなスケスケの下着、私以外の誰が着けるっていうんでしょう」
「盗難なら着ける目的じゃないと思うぞ……。まあ、そもそもお前の服なんぞ売ろうと思っても奇抜すぎて売れないかもしれないがな。身体は一つしかないのにどうしてそんなに服を持つ必要がある」
「ああ、でも、失くしたのならちょっと惜しいですわね。高かったのに。まだ減価償却してませんわ」
「下着にそんな金をかける必要はないということだろう、まあ俺は楽しませてもらっているが。というかセリーヌ、なんでもいいからそろそろ下を履け。あの黒い下着でなくてもよかろう」
「あん、ディアスってば、下着は女性のステータスですのよ。あの部分でいかに女を魅力的に見せるかが懸かっていますのに。女心が分からない人ねえ」
「見せる相手なんぞ俺しかいないだろう」
「んま、言いきりましたわね。その言い方も気に食いませんわ。わたくしだって、こう、いろんな殿方にモテたいという下心がなきにしもあらずですのよ。街中でちらっと見せたりとか」
「そのちら見せが起きたとき俺は全力で周囲の視界を防いでいるんだが、あれはわざとなんだな、そうなんだな」
「あーあ、わたくしの服を売るのは別にかまいませんけど、わたくしこれでも男性ファンが多いんですの。売るなら徹底的にプレミアをつけて売りさばきたいですわね」
「なんだか半ば犯罪の香りがする。本当に末恐ろしい女だ、お前は」
「その恐ろしい女にどっぷり浸かって張り合うあなたこそ末恐ろしい人ですわよ、まったく」