「ただいま帰りましたわ、ディアス」
「ああ、おかえり」
「…………」
「……?
 そんなところで何をしている」
「いえ、感動しまして」
「感動?」
「わたくしのただいまに、おかえりと返してくださったあなたに」
「……は?」
「私たちが夫婦になったのなら、きっと毎日こんな感じなのねえ、と」
「はあ。とはいえ、もしそうなっても俺が毎日おかえりと言う側だろう」
「ま、さすがによく分かっていらっしゃるわ」





「で。
 頼んだものは買ってきたのか」
「ええ。台所用洗剤でしたわね。まったく、いつまでこのコテージを借りているつもりですの? 宿泊費の節約にはなるけれど、わたくしそろそろ自炊は疲れてきましたわ」
「依頼人が報酬を持ってくるのが明日らしいからな。それまでは移動できん」
「報酬は最初から用意しておくのが常識ではございませんこと?」
「まあ、屋根の修理をしただけだから、二日間待たされるのも割に合わない気はするがな。今は手持ちがないから、主が外で稼いで持ってくるしかないという奥方の話だ」
「わたくしが洞窟でトレジャーハントしている合間に、あなたは家の修理。変な状況ね」
「正直、一緒に行動している意味はないな」
「でも、こうして一緒にいるのは、わたくしたちの間に強ーい絆があるからですわね。というわけで、こんなものを買ってきましたわ」
「なんだ」
「じゃーん。過激なランジェリー☆」
「…………」
「買い物のついでにランジェリーショップに寄って見つけた殿方の夢、黒のシースルーブラとパンティですわ。黒のガーターストッキングと組み合わせてみようと思いつきましたの。ほら見てごらんなさい、このスケスケ具合、もうなんのためにつけているか分からない」
「不躾なことを訊くようで申し訳ないが、それはいくらした」
「確か一万二千フォルだったかしら」
「いち、に、せ……!?」
「むろん二人の生活費には手を出していません。わたくしの小遣いで買いましたわ。殿方を楽しませるためには安いもの。わたくし、こういうのが以前から欲しかったんですの」
「普段している格好とそれほど変わらない気がするが……」
「何か?」
「いや」
「早速今晩着てみますわ。さすがのディアスも、これを着けたわたくしにはドキドキしてくださるのではなくて?」
「ふむ……一万二千フォルの恩恵はしっかりと受けないとな」
「んふふ。乗り気で嬉しいですわ」