美しい女性が台座に腰掛けている。
 神秘的なドレスを身に纏ったその女性は、跪く黒衣の男を見下ろしている。
 黒衣の男は顔を上げて尋ねた。

「聖獣の女王よ。
 あなたに時を操る力があると言うのならば、緑の守護聖に、かつての闇の守護聖を一瞬でも会わせてはくれぬか」

 女王は何も答えず、無表情で黒衣の男を見つめている。
 男は女王の顔を見つめ返す。二人の視線は交差するが、理解し合うことはなく、反発の色を宿している。
 しばし時が経った後、女王は冷静な面持ちで、そっと口を開いた。

「出来ません」

 一言に、男は即座に言い返す。

「ならば、何か小さな手がかりでも良いのだが」
「私に言えることは何もありません」

 広間に反響する、その無感情な、しかし苦悩を持つ言葉に、黒衣の男はゆっくりと瞼を閉じる。

「そうか」

 男は、一礼をして、女王に背を向ける。