izkk X限定テキスト A piece of cake 2025.1.17

自分の二次創作中の和菊について学習させたAIに、プロットに対して執筆作業において下地のみを任せ、私が更に加筆修正等の細かな編集を行っています






 冬の朝、リビングの窓からは曇りがちな白い空が見える。
 寒さは相変わらず厳しい。
 和泉はソファに腰掛け、テーブルに置かれた新聞に目を落とし、菊之助はキッチンで朝食の準備をしている。

 ふと、菊之助の声が聞こえた。
「今日は、ちょっと特別な日なんです」
 和泉は新聞から目を上げて菊之助を見た。
「特別な日?」
 菊之助は包丁を持つ手を止めずに頷いた。その顔は、どこか優しく微笑んでいるように見える。
 和泉は曖昧に相槌を打ち、再び新聞に視線を戻した。
「あ、もうすぐパンが焼けます。何塗りますか?」
 言葉の続きは気になったが、菊之助のほうから話題を切り替えたので、和泉がそれ以上追及することはなかった。

 仕事をこなし、いつも通りの忙しい一日を過ごした。
 夜、帰宅して夕食を済ませたあと、和泉は頭をクッションに預けながらソファに寝転んでスマートフォンを眺め、菊之助はキッチンで黙々と後片付けをしていたが、和泉は何度か菊之助に目をやり、彼の様子を窺っていた。
 菊之助はいつものように穏やかで、時折、何かを思い出したように謎の微笑みを浮かべている。怪訝に思った和泉はスマートフォンを胸に置き、声をかけた。
「菊。今日は特別な日だとか言ってたよな」
 菊之助は和泉の方を見て、控えめに微笑んだ。
「ええ。でも、大したことじゃありませんから」
 自分から話題にしたのに、すぐにはぐらかすような物言いに、和泉は眉を寄せる。
「そうか」
 言葉の裏に隠された何かが気になりながらも、和泉には答えが何かわからないので、それ以上突っ込むのは気が引けた。

 数十分後、和泉はおもむろにソファから体を起こした。
「ちょっと出てくる」
 そう短く言うと、上着を羽織り、玄関に向かう。
 菊之助が不思議そうに「どこに行くんですか?」と尋ねたが、和泉は「すぐ戻る」とだけ答えてドアを閉めた。

 二十一時。
 夜の街は寒さが厳しく、冷たい空気がまとわりつく。
 徒歩五分のコンビニの自動ドアをくぐり、和泉は店内を見回した。冷蔵品コーナーに、探し求めていた小さなホールのショートケーキが偶然にもある。
 ケーキのパックを手に取り、レジに並びながらも、和泉の頭の上にはいまだ疑問符が浮かんでいる。

 よく分からないまま、ケーキひとつを買って帰宅した。
 玄関を開けると、どこか心配そうな菊之助がすぐに顔を覗かせた。
「お帰りなさい。何を買ったんですか?」
 和泉はリビングに行くと袋からケーキを取り出し、テーブルに置いた。
「特別な日って言うからさ。何かは知らないけど」
 菊之助は置かれたホールケーキを見て一瞬目を丸くし、すぐにふわっと柔らかく微笑んだ。
「嬉しい」
 その声には、素直な驚きと喜びが滲む。

 ケーキは菊之助によって丁寧に二等分に切り分けられた。
 和泉の前に、シンプルな白い皿に載せられたケーキが置かれる。
「いただきます」と和泉が手を揃えて丁寧に言うと、菊之助も頷き、フォークを手に取った。

 黙々とケーキを口に運んでいた和泉がふと口を開いた。
「で、特別な日って結局なんだったんだ?」

 にこにこしてケーキを口に運んでいた菊之助は手を止め、少し迷うように視線を伏せた。
「……大したことじゃないんです、本当に」
「お前が言い出したんだろ?」
 和泉は肩をすくめた。
「こうしてケーキを買ってきたくらい、それなりに気になるわけだよ」
 ふたりの大事な約束を忘れていたのなら申し訳ないが、と和泉は心の中で思う。

 菊之助はほんのりと頬を赤らめ、テーブルに視線を落としたまま身じろぎした。
「和泉さんが、俺に『パーカ似合うな』って言ってくれた日です」

 一瞬、時間が止まったような静けさが広がった。
 和泉が眉を上げ「パーカ?」と驚きながら菊之助を見る。

 菊之助はぱっと顔を上げた。
「あのとき、和泉さんがそう言ってくれたこと、俺にはすごく嬉しかったんです」
 和泉はフォークを皿の上に置き、首の後ろを掻いた。
「……言ったような気はするけど……」
 実際のところ、具体的な日時までは覚えていない。申し訳なさを交えて正直に告げると、菊之助はくすくすと笑った。
「俺にとっては、なんとなく覚えてるだけで十分です」

 和泉は黙り込み、ケーキを食べる手を再び動かす。その間も、どこか落ち着かない様子でちらちらと菊之助の顔を見る。
「……ごめん」
 ぽつりと呟くと、菊之助は優しく微笑んで首を横に振った。
「俺自身の話ですから」
「しかし、パーカ記念日ってのを俺が祝うのはちょっと変だな」
 ケーキ買ってきたりなんかして。和泉のどこかふてくされた言葉に、菊之助はふふっと口元を覆って笑う。
「今でも、和泉さんに似合うって言われたら嬉しいです」

 口にケーキを運びながら、和泉は口角を上げた。
「そうかよ。じゃあまた今度な」
 和泉の言葉に菊之助はきらきらと瞳を輝かせ、頷いた。