akam Float 2026.7.11
自分の二次創作中の赤安について学習させたAIに、プロットに対して執筆作業において下地のみを任せ、私が更に加筆修正等の細かな編集を行っています。無断転載等はおやめください。
赤井の腕が、何の前触れもなく背後から回る。
降谷はダイニングテーブルに向かい、ノートパソコンを開いたまま報告書の追記をしていた。先ほど赤井から「無理するな」と言われたばかりだが、完全に止められたわけではないと都合よく解釈している。シャワーも浴びた。着替えも済ませた。だからこれはもう無理ではないと自分に言い聞かせながらキーを打っている。
キーを叩く音だけが響く部屋でしばらく画面と対峙していると、不意に背中に体温が重なった。振り向くより早く、肩口へ顎が乗せられた。煙草の匂いは薄い。代わりに、柔らかい布越しの温度が背中へじわりと広がる。
「無理するなと言ったはずだが」
声が、耳のすぐ後ろで落ちる。
降谷は視線を画面へ戻して、あと少しで終わると言う。声は平静を装っているが、背中へ回された腕の重みが妙に意識を乱す。赤井の腕は長く、簡単に自分の胸の前で組まれる。体をひねって逃げようと思えば逃げられる。だが、その気が削がれる。
赤井は何も言わず、腕の力を緩めない。
肩へ乗せた顎の角度を変えると、降谷の耳朶へ息がかかる。くすぐったさに思わず肩が揺れるが、赤井の腕はその動きを当然のように吸収する。
「本当に懲りないな」
呆れでも、叱責でもない声音だった。むしろどこか柔らかい。
降谷はキーボードから手を離さないまま答える。
「あと少し」
赤井は小さく息をつき、腹部の前で組んでいた腕に少し力を込める。拘束というほど強くはない。ただ、離さないという意思がはっきり伝わる強さだった。
降谷はようやく手を止める。背中へ密着する体温で、思っていた以上に落ち着かない。まだ仕事が終わっていない。終わる仕事が自分にあるはずもない。その事実を示すようにパソコンへ向かう行為そのものが赤井の気に入らないのだろう。
「零くん」
名前を呼ばれる。それだけで、身体が火照るようだった。
赤井の指が、シャツ越しに腹部をなぞるように撫でる。からかう動きではない。確認するような、宥めるような、ゆっくりした動き。
「平気そうな顔をしているが、今日は少し無理があるよ」
降谷は小さく息を飲む。
「そう、でもないです」
「無理をしているよ」
赤井にしては、強引な物言いだった。顎を肩から外し、その代わりに頬を軽く擦り寄せる。髪が触れ合い、微かな音がする。
背後から包まれ、視界の端には赤井の腕が見える。その腕の中に自分がいるという事実が、じわじわと効いてくる。
「俺の前でくらい、もう少し弱くいてほしい」
言葉に、降谷の指先が止まる。
反論が浮かばないわけではない。だが、背後から抱き込まれたままでは、理屈がうまく組み立てられない。赤井の腕は、論破するためのものではなく、言い訳を削ぐためのものだ。
赤井はさらに腕を引き、降谷の身体を椅子から半歩後ろへずらす。椅子の背もたれへ預ける形になり、自然と頭が赤井にかかる。
「重いでしょ」
小さく言うと、赤井はふっと笑う。
「いや、君は天使のように軽い」
その声音は楽しげで、降谷は悔しくなる。だが同時に、肩から力が抜けるのも止められない。
赤井はその変化を見逃さない。腹部へ回していた腕を少し上げ、降谷の胸元へ移す。心臓の位置を包むように。
「俺の愛らしい天使は緊張しているようだ」
囁くような声だった。
「心臓がどきどきしているのが分かる」
降谷は目を閉じる。確実に顔に血が上っている。それを赤井に知られていることが、もう隠せないことが、どうしようもなく胸を高鳴らせる。
天使だなんて、僕はそんな綺麗なものではないですよ……。そう溜息交じりに呟きながら、降谷はようやくキーボードから完全に手を離した。
何も言わない、しかし何か言いたげな赤井の腕は、降谷を離れないまま。
こんな自分にもそこが許される場所であることを、降谷は本当はずっと知っている。